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2018年02月04日

牛の肺炎治療記録

以前記事にもしたことのある「牛の肺炎」がテーマです。
以下はあくまでも牛飼い4年生の思うこと・考えること・実際の治療記録です。したがって牛の肺炎に対して専門的なお話ではないです。

さて、昨年の6月。8ヶ月齢で体重145㎏の雌牛を導入しました。虚弱と言うわけではなく、とにかく小さい牛でした(呼び名はチビ)。血統は光平照×福芳土井×宮弘波。
チビは導入直後から発熱し、通常の治療(抗生物質&解熱剤&栄養剤)を行いました。間もなく回復したものの、その後再び発熱。これを数回繰り返し、診断は「肺炎」とのことでした。もう少し詳しく言うと「肺炎+肺水腫」だそうです。
「肺水腫」の治療として、強心剤で肺の中の水分を少しずつ引っ張り出しながら、合う抗生物質で攻めていく方法をとりました。毎日のように治療を行いました。ところが解熱剤で熱は下がっても、数日後には再び発熱したり、夕方には呼吸が苦しそうだったり、抗生物質がはたして効いているのかどうか、なかなかチビも自分も苦しい時期でした。
効く抗生物質を探すこと約2ヶ月。3日間ほど試した抗生物質が効いているようで、発熱もおさまり呼吸もわずかですが穏やかになった様子でした。時折ぶりかえすこともありましたが、以前と比較すると体調が楽になっているのが観察していて明らかでした。
そんな最中、発熱が継続するようになり呼吸も苦しそうな症状が続くようになりました。診察をお願いしたところ、肺からは多少乾いたような雑音はするものの肺水腫は良くなっている。ただ肺から空気が漏れて皮下に溜まっているとのことでした。病名は「皮下気腫」でした。
チビの脇周辺をさすると「ぷつぷつ」と空気を潰すような音がするのがわかりました。この皮下気腫を治すのに約1ヶ月。指示された抗生物質を繰り返しました。そして「ぷつぷつ」する脇のあたりの面積が狭くなってきた頃、解熱剤や消炎剤で発熱を多少はコントロールできるものの、餌喰いは悪いし、表情もかなり辛そうな症状になりました。
ここで大活躍したのが、以前肺水腫時期に購入した「ネブライザー」でした。肺水腫に対するネブライザーは犬猫でも同様あまり効果が無いようで、数か月間箱にしまったままになっていたネブライザーを1日1回数日間試したところ、薬の効きが良くなったように感じました。
その後、チビは少しずつ少しずつ回復していきました。
以上がチビの肺炎治療を始めてからの経緯です。かなりざっくりです。実際はこの数か月間ほぼ毎日のように治療を行い、24時間体制で見守っていました。チビの首回りの血管はかなり傷んでいるし、本人も肺炎症状だけではなく、毎日の治療はかなり辛かったと思います。

肺炎や今回の治療スタート時の肺水腫に対するアプローチの仕方は牧場それぞれだと思います。出荷という選択肢もアリだと思っています。まして出荷間際の大きな牛さんたちには見切りをつける選択が普通かもしれません。
今回チビに関しては、薬も多く使いましたし、労力も果てしないほどでした。お金だってかかっています。決して記述した方法が今後も正しいとは思えません。しかしそんなチビをここまで導けたのは、「治す」という選択しか自分にはなかったからです。そして、今では1日1回のネブライザーが日課にはなったものの、元気に飛び跳ねたり(時折ゲホゲホ咳込みますが・・)餌を美味しそうに食べたりするチビを見ると、何が何でも治すという方法もアリなのかなと思います。
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ushikainotubuyaki at 18:35│Comments(4)

この記事へのコメント

1. Posted by 森と水と   2018年02月06日 11:10
5 お疲れ様です。
記事全部読みました。
生き物を育てることの大変さを改めて感じました。
一つ一つが勉強ですね。
これからも頑張って下さい。
2. Posted by 水沢   2018年02月08日 00:27
はじめまして。三重県で牛飼いをしている者です。
肺炎治療にネブライザを使用したいと色々と調べていて、こちらのブログにたどり着きました。
ネブライザにどのような薬液を使用しておりますでしょうか??
ご教授願えますと嬉しいです。
3. Posted by 管理人   2018年02月08日 13:50
こんにちは。コメントありがとうございます。
薬剤をどうするかは自分も一番悩んだところでした。
結論から申しますと、生理食塩水を溶媒に抗炎症を目的に水性デキサメサゾン注A(全薬)をメインに使いました。元々注射用ですが、獣医さんが全国組織である全薬さんに情報を求めたところ、ネブライザーに使用可能とのことでした。デキサ自体は他のメーカーの製品もありますが若干成分が異なるようです。
その他にはアスプールという気管支拡張剤です。こちらは人間用のお薬ですが、獣医さんなら取り寄せ可能だと思います。
肝心の抗生物質ですが、残念ながら自分には使用経験がありません。色々と調べるとアミノ配糖体の抗生物質(カナマイシンなど)は犬猫ネブライザーには使用しているようです。フェイスブックの牛飼いコミュニティ内でもカナマイシンを使用している方はいらっしゃいました。その他だとバイトリル(注射用)を使用されている方もいらっしゃいました。薬剤の配合割合まではわからないため、参考にならずすみません。
自分の場合は生理食塩水15ml+デキサ0.1〜0.3mlが基本でした。最近は1日1回のネブライザーにアスプール1.5mlを加えています。牛さんの口サイズに合った植木鉢に穴を開けてマスクとして使用しています。霧量はMaxで3分程度、マスクは被せ続けると苦しそうな感じもしたので手持ちで行い、途中途中で休みながら行っています。
ネブライザーは、肺炎の牛さん治療で効果が明らかに感じられる場合とそうでない場合があるように思います。しかし治療の選択肢の一つとして必要な医療機器だと自分はチビの治療を通して感じました。(中には反対する獣医さんもいらっしゃいます)。
治療中もうダメかと心折れそうになりましたが、根気よく付き合ったおかげで、チビは今日も元気に餌食べてます。頑張ってください。また何かありましたら遠慮なく聞いてください。自分のわかる範囲でお答えします。
4. Posted by 水沢   2018年02月08日 21:54
お返事ありがとうございます!
心のこもった丁寧なお返事、感謝致します。
私が今頭を悩ませている8ヶ月になる牛も、チビちゃんと本当によく似た症状で、治療してはよくなり、ぶり返し、治療しを何度か繰り返すうちに肺炎、そして悪化し、今は毎日治療を続けているのですが、 注射痕で固くなった首回りを見て申し訳ない気持ちと、よくなるのかなという不安とで心が折れそうになっていました。
ネブライザーを使用して、少しでも症状が緩和されればと願います!
教えていただいた薬品を先生にお願いして、早速試してみたいと思います!
本当に詳しく丁寧に説明していただきありがとうございました。
また色々と質問をさせて頂くかと思います!
チビちゃんがこのまま元気に育ちますよう祈っております( ^ω^)!

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